転倒の危険因子
大腿骨近位部骨折を招く転倒の危険因子として、以下の4要素が挙げられます。
- 歩行速度が遅い
- 視力が低下している
- 膝の下から足首の間が細い
- 継ぎ足歩行(踵とつま先を交互に触れさせながら歩くこと)ができない
これら4要素があって骨密度が低下している方は、いずれにも当てはまらない方と比較して大腿骨近位部を骨折する確率が5倍以上にもなります。
筋肉量・筋力も転倒に関係しています。主に加齢によって全身の筋肉量と筋力が低下し、身体能力が低下した状態(サルコペニア)だと、転倒やフレイル(心身の働きが弱まった状態)、骨折の危険性が高くなります。ただ、筋肉量が十分でも変形性膝・股関節症といった関節疾患を抱えていたり、心肺機能が低下していると転倒してしまう可能性があります。
ちなみに、骨粗鬆症自体も転倒の危険因子となります。骨粗鬆症によって背骨の一部が潰れるように折れ、その状態を放置していると背中が曲がることがあります。背中が曲がっているとバランスを保ちづらくなって転倒の危険性が高まります。
転倒しないための工夫
身体面
・運動
筋力・バランス能力を維持・向上する上で重要です。また、骨密度の維持も目指せます。ロコトレやウォーキングなどを無理のない範囲で行いましょう。
・バランスの取れた食事
バランスのとれた食事を心掛けつつ、筋肉量をキープするために十分なエネルギーとたんぱく質、ビタミンDの摂取を意識しましょう。ビタミンDは転倒予防になるだけでなく、カルシウムの吸収を助けるため骨粗鬆症の予防にも欠かせません。ビタミンDは紫外線を浴びることで体内でも生成されます。適度な日光浴(1日15分程度)もお勧めです。1日3回の規則正しい、バランスのとれた食事も心がけましょう。
環境面
- 手すりを設置する
- 絨毯やカーペットの縁がめくれないように工夫する
- 滑りやすい所には、マット等を敷かない
- 起床時、立ち上がりやすいように寝床の高さを調節する
- 手すりのそばを歩いたり杖を使う
- 滑りやすい雨や雪の日は、外出を控える
- 段差等に注意する
などなど
この他にも、転倒を防止するための環境調節は沢山あります。
特に高齢者の骨折は、寝たきりになってしまうリスクもあるため、環境の調節はとても重要です。
参考:旭化成